デンタルニュース

(平成29年12月号)

私たちの口の中には、まだ名前のないものも含めて約700種類の細菌が生息しています。歯垢はこれからの細菌の塊で、1g中に1000億個と言われています。元々胎児の口の中は無菌ですが、出生直後から母親や家族等から伝搬して、乳歯の生えそろう3歳頃迄には、口の中の細菌バランスが決まります。定着した常在細菌は、そのバランスを保ち続け、後から口の中に侵入する細菌やウィルスの異常増殖を抑え、口腔環境の維持に働き、私たちと良好な共生関係を保っています。例えば3歳までに、むし歯の原因菌であるミュータンス菌に感染しなければ、それ以降は感染しても増殖は抑えられるので、むし歯になりにくい口腔環境が整います。今月は『口腔内の細菌』についてご紹介したいと思います。

口腔内細菌が全身疾患に関与

実は、口の中にいる細菌の病原性(体に悪く働く性質)はとても弱く、唾液の洗浄・抗菌作用と毎日の歯磨きによって細菌数は抑えられています。しかし加齢や病気で免疫力が低下している状態の上、口腔清掃が不十分だと口腔内細菌が増加して共生関係が崩れ、いろいろな疾患を引き起こします。例えば、2012年の愛知県がんセンター研究所の行った疫学調査では、歯磨き習慣がない(口腔内細菌が多い)と、がんの危険性が2.5倍になると発表しています。 その他にも口腔疾患ならカンジダ症、重度の歯周病、口内炎、口腔ヘルペス等が、全身疾患なら誤嚥性肺炎、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病の悪化等が多くの研究から明らかになっています。逆に免疫力が落ちていても、口腔内細菌を減らせば全身の状態を確実に良くできることがわかっています。例えば免疫力が低下している手術後の患者さんについて、口腔ケアを実施して細菌数を減らすと体の免疫が温存できるため、患部の回復が早まり入院期間が約30%も短くなることが報告されています(千葉大)。厚生労働省でも手術前後の口腔ケアを推奨し、平成24年に保険点数を新設、平成28年には点数を2倍に引き上げて、周術期口腔機能管理(手術前後に口腔内細菌を減らすこと)を推進しています。

効果的な歯の磨き方

普段の生活の中で気を付けていただきたいのは、歯磨きのタイミングです。細菌数をコントロールすると言う点から言えば、就寝前と起床後朝食前の2回が効果的です。就寝中は唾液量が低下して、口内細菌が急激に増殖します。朝起きてから、うがい・すすぎ・軽い空磨き等をしないまま朝食を摂ると細菌はすべて胃腸へと入り込んでしまいます。病原性が低いとは言っても、長期間、多量の細菌にさらされることは避けたいものです。また毎日の歯磨きでは、汚れの残りやすい歯の頭部(噛み合わせの面)と歯と歯ぐきの境目に歯ブラシをしっかり当てて磨くことが大切です。歯ブラシでは除去できない歯石は、歯科医院を受診しましょう!

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